[インターネットと教育] [2000年の調査(123| 2000年の調査45)] [ 99年| 98年| 97年| 96年 ] [大阪教育大学]


インターネットの教育利用の現状 '00.1


1.はじめに 
2.学校のインターネット接続環境 
3.教育・学習情報 
4.交流・共同学習 
5.まとめ 
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  2001年3月20日準公開、4月1日公開予定


3.教育・学習情報

 インターネットを教育に利用する際,マルチメディアリソースの書庫(アーカイブ)としての役割が活用の1つの柱となっている.では,インターネット上では現在どんな教育・学習情報が必要とされているのだろう.不足している教育・学習情報を2項目選択で尋ねた結果を表4に示す.この傾向も昨年とあまり変化がなかった.教育実践報告や指導案といった,授業に直接参考となる情報,インターネットをどのように活用しているかという方法論的な情報に対する需要が高い.次に,画像や統計資料などの素材データ,あるいは教育用ソフトウェア,電子教科書のような教材データが位置している.今後,インターネットの教育利用が進んで,活用の方法論がある程度浸透すれば,教育・学習素材情報に対する要求が高まっていくことも予想される.

表4 不足している教育・学習情報 (2項目選択,計200%で表示)

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 不足している教育・学習情報   高校  中学  小学  養護  合計  比
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 実践事例報告・学習指導案      176   103   140    32   451   50.7%
 画像・統計資料(素材)      85    68   132    19   304   34.2%
 教育用ソフトウェア          108    59    79    22   268   30.1%
 電子教科書・参考書           100    47    62    13   222   24.9%
 国内・国際交流先紹介         63    42    84     5   194   21.8%
 共同学習・催し物案内         61    38    59     8   166   18.7%
 図書館・美術館・博物館情報       30    28    30     0    88    9.9%
 その他              19    17    40    11    87    9.8%
 合 計              642   402   626   110  1780  200.0%
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 さて,これらの教育・学習情報を受信する場合あるいは発信する場合の問題点をそれぞれ2項目選択してもらった結果が表5および表6である.受信時の問題点の1位と2位は,教育・学習の場で利用可能な情報の絶対量が少ないことやこれを探し出すことが容易でないことを示している.また自由記述欄では,特に小学生向けに表現されたページ(漢字,用語など)が少ないことが指摘されていた.一方,3位と4位は情報の質の問題であり,学校で安心して使うためにはなんらかの形での情報の選択が必要とされている.ただし,これに関しては,児童・生徒自身の情報選択能力や判断力を育成することの重要性も指摘されている.

 情報発信時の問題も昨年と同様の結果が得られた.校内の組織が未整備であることおよび,コンテンツの作成や更新に手間がかかることが上位にあることは,調査対象となった学校のウェブページ管理者への負担の集中をうかがわせるものである.また,プライバシーの保護や著作権からくる発信内容の制約などが大きいとの指摘が昨年に比べて目立ち,実際の活動が進むに連れて明らかになる問題も多い.

表5 情報受信時の問題点 (2項目選択,計200%で表示)

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 情報受信時の問題点        高校  中学  小学  養護 合計  比
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 過剰な情報からの取捨選択が困難  172   122   222    31   547   61.5%
 必要な教育用の情報が存在しない   100    69   134    21   324   36.4%
 不適切な情報を排除できない     107    73    64    12   256   28.8%
 情報の信頼性に不安がある      104    47    71    11   233   26.2%
 教育効果がうまく評価できない    97    43    45    15   200   22.5%
 情報が外国語のままである       23    21    26     6    76    8.5%
 情報が頻繁に移動、変更される    15    19    18     6    58    6.5%
 その他                24     8    46     8    86    9.7%
 合 計                642   402   626   110  1780  200.0%
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表6 情報発信時の問題点 (2項目選択,計200%で表示)

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 情報発信時の問題点       高校  中学 小学 養護 合計  比
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 校内の組織が未整備である       181    96   150    27   454   51.0%
 コンテンツの作成・更新に手間    140    95   173    28   436   49.0%
 プライバシーの保護からの制約   136    95   130    28   389   43.7%
 著作権からくる発信内容の制約    54    43    51     7   155   17.4%
 教育効果がうまく評価できない    46    25    43     2   116   13.0%
 発信内容の承認手続きが面倒     35    17    46    10   108   12.1%
 アクセス・応答が少ない        14    11    21     1    47    5.3%
 その他                36    20    12     9    75    8.4%
 合 計                642   402   626   110  1780  200.0%
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4.交流・共同学習

 インターネットの教育利用のもう一つの柱である,インターネットをメディアとして利用した交流・共同学習に関する質問を行った.交流・共同学習の経験の有無に関しては,経験ありが46%(高31%,中45%,小63%,養59%),経験なしが54%(高69%,中55%,小37%,養51%)となった.学年が上がるにつれて,教科の専門性が重視され,交流や共同学習の動機が減少しているのかもしれない.第1ステージでは,インターネットの教育利用は実験的な共同学習プロジェクトを中心として進んできたが,インターネット接続校の増加と共に,プロジェクト的な活動が相対的に減少している.

表7 交流・共同学習の経験 (2項目選択,計200%で表示)

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 交流・共同学習の経験   高校  中学  小学  養護 合計  比
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 経験なし          220   111   117    28   476   53.5%
 国内のクラス・学校      36    31   127    15   209   23.5%
 地域のクラス・学校      19    27    69    13   128   14.4%
 海外の学校や人々       50    26    36     4   116   13.0%
 校内のクラス、学年間     30    27    33     6    96   10.8%
 国内の学校外の人々      17    20    40     6    83    9.3%
 地域の学校外の人々       15    14    36     2    67    7.5%
 その他            61    35    51     8   129   14.5%
 合 計*           422   291   509    82  1304  146.5%
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(*2項目選択だが,経験なしの場合は1項目になるため,合計は200%に満たない)

 次に,交流・共同学習における問題点について尋ねた.「メールアカウントが不足している」が40%と最も多くなっている.なお,高等学校と小学校では傾向が異なり,高校では交流のために電子メールを使用することで生ずるプライバシーの問題が第1位となって実践をためらっている様子がみられるが,小学校では,むしろ,交流・共同学習への関心がうかがわれ,交流・共同学習の相手が見つからないことや,実際に実践を進めた結果,様々な理由で交流が長続きしないことが指摘されている.

表8 交流・共同学習の問題点 (2項目選択,計200%で表示)

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 交流・共同学習の問題     高校  中学  小学  養護 合計   比
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 メールアカウントが不足    120    86   135    19   360   40.4%
 児童・生徒のプライバシー    121    73   104    17   315   35.4%
 交流・共同学習の相手がない   86    62   118    19   285   32.0%
 意思疎通・長続きしない      29    40    72    11   152   17.1%
 教育効果が評価できない      69    29    27     5   130   14.6%
 言葉・習慣・時間の壁       41    30    40    10   121   13.6%
 嫌がらせ・広告メール      66    27    18     4   115   12.9%
 その他            110    55   112    25   302   33.9%
 合 計              642   402   626   110  1780  200.0%
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 交流・共同学習の一位にあげられたメールアカウントの発行数は,昨年の傾向とほとんど変わっていない.教職員に関しては,22%の学校でグループアカウントも含めて電子メールアカウントが発行されていない.これに,アカウント数が,1(30%),2-3(9%),4-5(4%),5-10(5%)などと続く.調査対象校における教職員アカウントの平均発行数は,7.6(高9.6,中7.8,小4.6,特10.6)となっている.

 また,児童生徒に関しては64%の学校でメールアカウントが発行されていない.これにアカウント数が,1(11%),2-5(2%),6-10(3%),11-20(3%)などと続く.調査対象校における児童生徒アカウントの平均発行数は,12.4(高19.0,中16.2,小5.0,特3.1)となっている.

図5 教職員のメールアカウント        図6 児童生徒のメールアカウント

(青は昨年のデータ,赤は今年のデータ)

5.まとめ

 日本におけるインターネットの教育利用の第二段階が始まり,学校における環境整備は,2005年を目標に着実に前進している.一方,これを諸外国と比較した場合,日本の進度は必ずしもトップクラスにあるわけではないが,それでも相当な資源が学校教育の情報化のために投入されつつある.

 我々は,教育情報リンク集「インターネットと教育」で収集している情報と全国の学校ウェブページ管理者に対するアンケート調査から,日本のインターネットの教育利用の展開の様子を定点観測している.インターネットへの接続率や,校内の接続可能な端末数など,校内ネットワークの整備を除けば,基本的には環境面の整備はほぼ順調に進行しているようにみえる.

 一方,校内組織の未整備,教育・学習情報リソースの不足,電子メールアカウントの不足など,運用上のさまざまな問題点は昨年からあまり変わっていない.ほとんどの教師がなんらかの形で,情報技術による新しい学習環境を咀嚼して,活用を進めるためには,ハードウェアやソフトウェアの環境整備に加えて,人的環境の整備や支援体制の確立が急務である.

 現場の教員からは,情報教育に関する専任のスタッフ(教員)の手当てが必要であると意見も多いが,現実問題としては,予算の制約が大きいため困難な課題である.次に必要となるのは教員研修の体制づくりである.各地方自治体のレベルでは研修プログラムがこなされているが,さらにその量・質ともにいっそう改善を進め,新しい学習環境が活かせるシステムの構築が切望されている.


付記

 この調査は,日本教材文化研究財団の「教育におけるマルチメディア・インターネットの効果に関する研究(座長:坂元昂先生)」から一部援助を受けています.


謝辞

 お忙しい中をアンケートの回答にご協力下さった全国の学校の先生方,また日頃からネットニュース,メーリングリストその他で議論いただいた方々に深く感謝いたします.

資料 インターネットの教育利用の現状に関する調査

 WWWのフォームとして提示した調査票の本文はここを参照されたい.回答されたフォームは,集計者にメールで転送されるよう設定した.また,直接メールによる回答希望者には,同内容の調査票をメールで送信している.

 なお,回答者の内訳は以下のとおりである.
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大阪教育大学 理科教育講座(物理) 越桐國雄 (2001年3月20日)