1.はじめに 2.学校のインターネット接続環境 3.教育・学習情報 4.交流・共同学習 5.まとめ |
〒582-8582 大阪府 柏原市 旭ケ丘 4-698-1 大阪教育大学 理科教育講座(物理) 越桐 國雄 TEL:0729-78-3373 ( 共通FAX:0729-78-3366 ) koshi@cc.osaka-kyoiku.ac.jp 2001年3月20日準公開、4月1日公開予定 |
インターネットを教育に利用する際,マルチメディアリソースの書庫(アーカイブ)としての役割が活用の1つの柱となっている.では,インターネット上では現在どんな教育・学習情報が必要とされているのだろう.不足している教育・学習情報を2項目選択で尋ねた結果を表4に示す.この傾向も昨年とあまり変化がなかった.教育実践報告や指導案といった,授業に直接参考となる情報,インターネットをどのように活用しているかという方法論的な情報に対する需要が高い.次に,画像や統計資料などの素材データ,あるいは教育用ソフトウェア,電子教科書のような教材データが位置している.今後,インターネットの教育利用が進んで,活用の方法論がある程度浸透すれば,教育・学習素材情報に対する要求が高まっていくことも予想される.
表4 不足している教育・学習情報 (2項目選択,計200%で表示)
---------------------------------------------------------------------- 不足している教育・学習情報 高校 中学 小学 養護 合計 比 ---------------------------------------------------------------------- 実践事例報告・学習指導案 176 103 140 32 451 50.7% 画像・統計資料(素材) 85 68 132 19 304 34.2% 教育用ソフトウェア 108 59 79 22 268 30.1% 電子教科書・参考書 100 47 62 13 222 24.9% 国内・国際交流先紹介 63 42 84 5 194 21.8% 共同学習・催し物案内 61 38 59 8 166 18.7% 図書館・美術館・博物館情報 30 28 30 0 88 9.9% その他 19 17 40 11 87 9.8% 合 計 642 402 626 110 1780 200.0% -----------------------------------------------------------------------
さて,これらの教育・学習情報を受信する場合あるいは発信する場合の問題点をそれぞれ2項目選択してもらった結果が表5および表6である.受信時の問題点の1位と2位は,教育・学習の場で利用可能な情報の絶対量が少ないことやこれを探し出すことが容易でないことを示している.また自由記述欄では,特に小学生向けに表現されたページ(漢字,用語など)が少ないことが指摘されていた.一方,3位と4位は情報の質の問題であり,学校で安心して使うためにはなんらかの形での情報の選択が必要とされている.ただし,これに関しては,児童・生徒自身の情報選択能力や判断力を育成することの重要性も指摘されている.
情報発信時の問題も昨年と同様の結果が得られた.校内の組織が未整備であることおよび,コンテンツの作成や更新に手間がかかることが上位にあることは,調査対象となった学校のウェブページ管理者への負担の集中をうかがわせるものである.また,プライバシーの保護や著作権からくる発信内容の制約などが大きいとの指摘が昨年に比べて目立ち,実際の活動が進むに連れて明らかになる問題も多い.
表5 情報受信時の問題点 (2項目選択,計200%で表示)
------------------------------------------------------------------------- 情報受信時の問題点 高校 中学 小学 養護 合計 比 ------------------------------------------------------------------------- 過剰な情報からの取捨選択が困難 172 122 222 31 547 61.5% 必要な教育用の情報が存在しない 100 69 134 21 324 36.4% 不適切な情報を排除できない 107 73 64 12 256 28.8% 情報の信頼性に不安がある 104 47 71 11 233 26.2% 教育効果がうまく評価できない 97 43 45 15 200 22.5% 情報が外国語のままである 23 21 26 6 76 8.5% 情報が頻繁に移動、変更される 15 19 18 6 58 6.5% その他 24 8 46 8 86 9.7% 合 計 642 402 626 110 1780 200.0% -------------------------------------------------------------------------
表6 情報発信時の問題点 (2項目選択,計200%で表示)
------------------------------------------------------------------------- 情報発信時の問題点 高校 中学 小学 養護 合計 比 ------------------------------------------------------------------------- 校内の組織が未整備である 181 96 150 27 454 51.0% コンテンツの作成・更新に手間 140 95 173 28 436 49.0% プライバシーの保護からの制約 136 95 130 28 389 43.7% 著作権からくる発信内容の制約 54 43 51 7 155 17.4% 教育効果がうまく評価できない 46 25 43 2 116 13.0% 発信内容の承認手続きが面倒 35 17 46 10 108 12.1% アクセス・応答が少ない 14 11 21 1 47 5.3% その他 36 20 12 9 75 8.4% 合 計 642 402 626 110 1780 200.0% -------------------------------------------------------------------------
インターネットの教育利用のもう一つの柱である,インターネットをメディアとして利用した交流・共同学習に関する質問を行った.交流・共同学習の経験の有無に関しては,経験ありが46%(高31%,中45%,小63%,養59%),経験なしが54%(高69%,中55%,小37%,養51%)となった.学年が上がるにつれて,教科の専門性が重視され,交流や共同学習の動機が減少しているのかもしれない.第1ステージでは,インターネットの教育利用は実験的な共同学習プロジェクトを中心として進んできたが,インターネット接続校の増加と共に,プロジェクト的な活動が相対的に減少している.
表7 交流・共同学習の経験 (2項目選択,計200%で表示)
------------------------------------------------------------------------- 交流・共同学習の経験 高校 中学 小学 養護 合計 比 ------------------------------------------------------------------------- 経験なし 220 111 117 28 476 53.5% 国内のクラス・学校 36 31 127 15 209 23.5% 地域のクラス・学校 19 27 69 13 128 14.4% 海外の学校や人々 50 26 36 4 116 13.0% 校内のクラス、学年間 30 27 33 6 96 10.8% 国内の学校外の人々 17 20 40 6 83 9.3% 地域の学校外の人々 15 14 36 2 67 7.5% その他 61 35 51 8 129 14.5% 合 計* 422 291 509 82 1304 146.5% ------------------------------------------------------------------------- (*2項目選択だが,経験なしの場合は1項目になるため,合計は200%に満たない)
次に,交流・共同学習における問題点について尋ねた.「メールアカウントが不足している」が40%と最も多くなっている.なお,高等学校と小学校では傾向が異なり,高校では交流のために電子メールを使用することで生ずるプライバシーの問題が第1位となって実践をためらっている様子がみられるが,小学校では,むしろ,交流・共同学習への関心がうかがわれ,交流・共同学習の相手が見つからないことや,実際に実践を進めた結果,様々な理由で交流が長続きしないことが指摘されている.
表8 交流・共同学習の問題点 (2項目選択,計200%で表示)
----------------------------------------------------------------------- 交流・共同学習の問題 高校 中学 小学 養護 合計 比 ----------------------------------------------------------------------- メールアカウントが不足 120 86 135 19 360 40.4% 児童・生徒のプライバシー 121 73 104 17 315 35.4% 交流・共同学習の相手がない 86 62 118 19 285 32.0% 意思疎通・長続きしない 29 40 72 11 152 17.1% 教育効果が評価できない 69 29 27 5 130 14.6% 言葉・習慣・時間の壁 41 30 40 10 121 13.6% 嫌がらせ・広告メール 66 27 18 4 115 12.9% その他 110 55 112 25 302 33.9% 合 計 642 402 626 110 1780 200.0% -----------------------------------------------------------------------
交流・共同学習の一位にあげられたメールアカウントの発行数は,昨年の傾向とほとんど変わっていない.教職員に関しては,22%の学校でグループアカウントも含めて電子メールアカウントが発行されていない.これに,アカウント数が,1(30%),2-3(9%),4-5(4%),5-10(5%)などと続く.調査対象校における教職員アカウントの平均発行数は,7.6(高9.6,中7.8,小4.6,特10.6)となっている.
また,児童生徒に関しては64%の学校でメールアカウントが発行されていない.これにアカウント数が,1(11%),2-5(2%),6-10(3%),11-20(3%)などと続く.調査対象校における児童生徒アカウントの平均発行数は,12.4(高19.0,中16.2,小5.0,特3.1)となっている.
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図5 教職員のメールアカウント 図6 児童生徒のメールアカウント
(青は昨年のデータ,赤は今年のデータ)日本におけるインターネットの教育利用の第二段階が始まり,学校における環境整備は,2005年を目標に着実に前進している.一方,これを諸外国と比較した場合,日本の進度は必ずしもトップクラスにあるわけではないが,それでも相当な資源が学校教育の情報化のために投入されつつある.
我々は,教育情報リンク集「インターネットと教育」で収集している情報と全国の学校ウェブページ管理者に対するアンケート調査から,日本のインターネットの教育利用の展開の様子を定点観測している.インターネットへの接続率や,校内の接続可能な端末数など,校内ネットワークの整備を除けば,基本的には環境面の整備はほぼ順調に進行しているようにみえる.
一方,校内組織の未整備,教育・学習情報リソースの不足,電子メールアカウントの不足など,運用上のさまざまな問題点は昨年からあまり変わっていない.ほとんどの教師がなんらかの形で,情報技術による新しい学習環境を咀嚼して,活用を進めるためには,ハードウェアやソフトウェアの環境整備に加えて,人的環境の整備や支援体制の確立が急務である.
現場の教員からは,情報教育に関する専任のスタッフ(教員)の手当てが必要であると意見も多いが,現実問題としては,予算の制約が大きいため困難な課題である.次に必要となるのは教員研修の体制づくりである.各地方自治体のレベルでは研修プログラムがこなされているが,さらにその量・質ともにいっそう改善を進め,新しい学習環境が活かせるシステムの構築が切望されている.
この調査は,日本教材文化研究財団の「教育におけるマルチメディア・インターネットの効果に関する研究(座長:坂元昂先生)」から一部援助を受けています.
WWWのフォームとして提示した調査票の本文はここを参照されたい.回答されたフォームは,集計者にメールで転送されるよう設定した.また,直接メールによる回答希望者には,同内容の調査票をメールで送信している.
なお,回答者の内訳は以下のとおりである.